さっそくクラスの面々を把握して、ドラマの設定を書き上げた。アイドルさんたちにクラスの連中を入れてドラマを作ることに「無某だ」というスタッフもいたが、では、いつ彼らはプロの現場に行くのか?レッスンの段階も踏んでゆくのも当然のことだが、今活躍している俳優たちも準備万端で「最初のチャンス」に挑んだわけでわない。サッと降り掛かってきたチャンスに「いきなり」があったはずだ。だからこそいつ来るかわからない「チャンス」に備えてレッスンやトレーニングが常に必要なのだ。名優はそれを知っている。 日本にはある声や型を憶え込ませた演技ができるようになれば、本番でもそれを再生すればいいと、自分の内面を動かす調整、トレーニングを毎日しない。演技こそ微妙な調整が必要なはずであるのに。特にクローズアップが存在する映像の世界では顕著に表れるはずである。
少し横道にそれたが、私自身にも余裕は無かった。贅沢なキャスティングも出来ないし、予算もない。よく実力を知るクラスの連中を使うことに腹を決めた。
こうゆう条件の時にチャンスがころがって来ることが多い。条件を突きつけられて、すぐ毛嫌いし断ることがあるが、よく考えることだ。ただ断っておくが、すべてに素晴らしい結果が得られるとは限らない。作り手の方にも、こうゆう条件の元で起用された意欲的なアーティストが現れる可能性が大きいのだ。デニーロたちがまだ無名の監督だったスコセッシ、デパルマなどに出会った例は偶然ではないのだ。厳しい条件の中から大きな出会いがあるからだ。
私はクラスの連中に自主製作の映画をバカにしないで、積極的に参加しろと言っている。無名だからこそできる事があるが、それを最大限に生かせばいい。失敗を恐れては先には進めない。
さて、キャスティングだが、もちろんレッスンでいい結果を出しているメンバーを選ぶことは外
せない。情に流されたキャスティングがどんな結果を生むかは、経験でイヤというほど知っている。
クラスに在籍して平均2年あたりのメンバーを重要な役の候補としてチョイスした。 ―キャステイング(配役)、次回に続く
|